『子育てママ・パパ、
支援者へのメッセージ』
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恵泉女学園大学大学院教授
子育てひろば<あい・ぽーと>施設長
     大日向 雅美
  はじめに 〜本来は楽しいはずの子育てなのに・・・〜
 
      「子育てはいつになったら終わりますか?」
子どもを抱きかかえながら思いつめた顔をして、こう尋ねるお母さん方に時折出会います。
「子どもはかわいい!子育ては素晴らしい!!」と皆が言う。自分もそう信じて子どもを産み、子育ての生活に足を踏み入れたのに、「子育てがこんなに大変だとは思わなかった。聞き分けのない子どもの世話にうんざり。
イライラして、手を挙げそうで、怖い」と訴え、「こんなはずではなかった!」と苦い思いを噛みしめている母親が、全国各地にたくさんいるのです。
なぜでしょう?
  一方、子育てに悩み、苦しむ母親を身近に見る周囲の人の気持ちも複雑のようです。  近年は急速に少子化が進み、その対策の一環として子育てを支援する必要性が各方  面から指摘されています。
子育て中のお母さん方を応援しようと頭では理解しているつもりでも、何か腑に落ちないという年配の人も少なくありません。
その方々は、「子育てほど素晴らしい仕事はない。女性には母性本能があったはずなのに、なぜお腹を痛めたわが子を愛せないのか?最近の女性は母性を失っているのかと、正直な気持ちを言えば、嘆かわしい限りです」と、これまた苦虫を噛んだような表情を浮かべます。
 
  たしかに子育ては手間のかかる「苦労」がありますが、幼い命の成長過程を間近にみる喜びと楽しさは、格別です。無心に慕ってくる幼い子どもを一身に受け止めながら、人 を愛し尽くす喜びを味わうことができます。  子どもの姿にわが身の幼い日々を重ねて、自分の生い立ちを懐かしく想い出したりもすることでしょう。 人生にはいろいろな仕事がありますが、中でも子育てほどやりがいのあるものはないという意見も、もっともなことであると私は思います。   
 
      
 
   しかし、こうした子育ての醍醐味は、子育てが一段落し、暮らしや心にゆとりが生じたときに、解放感と共に噛みしめることができるものかも知れません。
手間暇のかかる乳飲み子の世話に追われ、学齢期を間近にすれば、ほっと息つく暇もなく、しつけや教育に頭を痛め、果てはいじめや非行の急増を伝えるニュースに、もしやわが子も一つ間違えば、同じ過ちに陥るのかと戦々恐々とする親の胸の内はいかばかりかと、想像に難くありません。
 
  「子育ては楽しいでしょ!すばらしい仕事ですよ!!だから 頑張って!!!」という声かけは、決してエールにはならない のです。

「子育てがつらい」と訴える親の声にじっと寄り添うことが支援の始まりです。じっくり耳を傾けていると、つらさの原因が見 えてきます。
 
   「子育て支援は“傾聴”から」を胸に秘めて、 周囲は子育てに悩む親の声に耳を傾けましょ う。  一方、お母さん方も完璧な子育てを目指さ ないで。 また「育児をつらく思うのは私だけ?私は母 親失格?」と思い詰めないでください。全国的に、少しずつですが、子育て支援も動 き始めています。周囲の人々に上手にSOSを発し、皆の力を借りながら、子育て期を乗り切っていただきたいと願って、メッセージをお届けしたいと思 います。  
   
 
    子育てのつらさのルーツを辿ってみましょう
   〜育児に悩む母親たちの生活の現実〜  
  子育てのつらさを訴えるからといって、母親たちはけっして子育てを嫌っているわけではありません。

大半は子育ての大切さを自覚し、子どもを懸命に育てようとして日々、子育てに励んでいるのです。

それにもかかわらず、なぜ子育てをつらく思い、ときとしてわが子を  疎ましく思ってしまうのでしょうか?
 
     育児中の母親たちの生活実態を調べてみると、いかに人間的な環境を奪われているかに驚かされます。

乳飲み子の世話に追われて、ホッとする時間もままならないのが実態です。

「トイレに一人で入りたい」「たまにはゆっくり湯船に浸かってみたい」「食事のときくらい、椅子に座って食べたい」と言う言葉をよく聴きます。
 
 また、乳飲み子を連れた外出も大変です

都心ですと、ベビーカーを押して歩くと、行き交う人にぶつかり、迷惑そうな顔をされることも少なくありません。 道の反対側に行くには歩道橋を渡らなくてはならないなど、バリアフリーの街づくりはまだまだ発展途上です。 電車やバスに乗って、子どもが泣き出したときには、しつけ一つできないだらしない母親と思われているのではないかと、身が縮む思いがして、肩身の狭いこと等々、あれやこれや考えると、外出もうっとおしいしい気分になって、出かけても、せいぜい半径300メーターの範囲がやっとです、と母親たちは言います。
  
 
     育児中の母親の行動範囲が限らざるを得ませんが、話し相手にもなかなか恵まれません。
  片言しか話さない子どもと一日、家に閉じこもっていると失語症になりそうで 「つくづく大人の会話をしたい」という気持ちに駆られると、母親たちは訴えます。 
 
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次回特集 『子育てママ・パパ。支援者へのメッセージ』は
〜専業主婦の母親と働く母親の悩みの違い〜 についてです。