『子育てママ・パパ、支援者へのメッセージ』NOV  
恵泉女学園大学大学院教授 子育てひろば
<あい・ぽーと>施設長
  大日向雅美
 〜今、求められる支援とは〜

これまで、子育て中の母親の生活実態や夫婦関係の問題について述べてきましたが、 以下では、今後、どのような支援が必要なのかについて、具体的に考えてみたいと思います。
 
 ・在宅家庭の母親への支援に社会との接点の視点を

在宅で子育てをしている母親が直面している問題は、一 言で言えば孤独な子育てから生じる問題です。従って、その解決策としては、まず第1に、家の中で乳幼児とだけ向き合って閉じこもる生活から解き放つことが必要でしょう。
 
 
  具体的には、生活圏の中に、ベビーカーを押して 気軽に出かけることのできる子育てひろば等の確 保が必要です。

現在、行政や社会福祉法人、NPO、民間団体等 によって、ひろばの開設が各地で進められています。 同世代の母親どうしが子連れで集い、会話を楽しみ、 子育ての情報や工夫を交し合う光景は、いずれの ひろばでも見られます。
そこに保育士や保健師、地域の子育ての先輩に あたる人たちが見守り、相談に携わるところも増え ていて、孤独な子育てに陥りがちな母親にとって、 何よりの救いとなっています。
 
 
  それでも、子育てひろばの現状を見ると、問題も 少なくないと私は思います。

第1は、常設のひろばが現状ではまだ少ない ことです。

乳幼児の子育て中は、行動のスケジュールが立 てにくいものです。子連れ外出は天候等にも左右 されます。決められたひろばの開設の日時にあわせて出かけることは、なかなか難しいものです。
ひろばの常設は必須条件なのですが、現実には 予算や場所の確保の問題から、週に1日、あるい は月に2,3日しか開催されていないひろばが全国 的には大半を占めています
 
 
  問題の第2は、ひろばが母子だけが集う空間となっていて、話題 も催される企画も、子どもや子育てに関したものが大半です。

ひろばは子どもが楽しく遊べることが大切なことは言うまでもありませんが、同時に育児中の女性が、心のゆとりと広い視野をもって子育てに当たることができるための機会を提供する場でもあって欲しいと 私は願っています。 育児中だからこそ、子どもや育児以外の話題や活動も必要なのです。
 
 
  子どもの誕生を喜びとし、子育てに専念する生活を主体的に選んだと言っても、社会との接点を求めたいとする欲求も同時に持っている女性が増えているのは前述の通りです。

育児中であっても社会人としての自分を取り 戻せる時間と空間の提供や、育児が一段落し た後の社会参画を可能とする支援を視点にもっ た企画がこれからの子育てひろばには求めら れることでしょう。 現状は、子どもを中心とした視点しかもってい ないひろばが大部分であることが残念に思わ れます。 どこに行っても、「○○ちゃんのママ。お 母さん」としか呼ばれない。母親以外の大 人としての扱いをしない環境に身を置かせ て、なお広い視野で子育てを、と要求する 矛盾に、私たちはそろそろ気づくべきでは ないでしょうか。
 
〜働く母親への支援のために、 そして父親の育児を促すために〜 
三歳児神話の丁寧な分析と ワークライフバランスの推進を
 
 
働く母親に必要な支援は、仕事と子育て を無理なくバランスよくこなせるような仕組 み作りにほかなりません。

何よりも母親が働くことが子どもにとって マイナスの影響を及ぼすのではなく、かえって周囲の人に見守られて育つプラス面につなげていくことが大切です。
 
    そのためには、働く母親を戸惑わせている「三歳児神話」を丁寧 に分析し直し、その真偽について検討することが必要です。 (詳細は別途コラムを参照して下さい)
いわゆる「三つ子の魂百まで」ということわざもあるように、幼少 期の大切さを否定するものではありません。
  むしろ、人に愛される経験の重要性を指摘している点は、子ども の発達の基本ともいうべき重要な要素であって、神話として捨て去 られるべきものではないと私は考えています。
 しかし、幼少期に注がれるべき愛情を母親の愛だけに限定 して捉え、母親が育児に専念しないと取り返しのつかない影響 を子どもに及ぼすとする考え方は、現実的でないばかりか、母 親の育児負担を重くし、母親以外の人が子どもと関わる大切さ を無視してきたという点が問題なのです。  
「三歳児神話」を乗り越えるためには、子育てをしながら無理 なく働けるよう、職場が仕事と家庭生活のバランスに配慮する こと、同時に日中、子どもが過ごす保育所の環境を整備するこ とが不可欠です。 こうした環境整備を実施して働く親支援につなげることが「三 歳児神話」からの真の解放であり、子育て支援につながるので す。
    仕事と家庭生活を無理なくバランスよく保つ生活の保障は、 男性にも必要です。かつて「育児をしない男は父とは呼ばない」という刺激的なキャンペーン(当時:厚生省)が行われたことをご記憶の方もおられることと思いますが、男性だけを個人的に責めて解決する問題ではありません。 できることならもっと育児にかかわりたいと願う夫も近年では徐々に増えてきていることが、調査結果に示されています(ベネッセ次世代育成研究所「乳幼児の父親についての調査」2006)。
   男性がもっと育児にも関われるように、少子化対策の一環として、企業の職場環境を改めることを求める次世代育成支援推進法も改訂され、301人以上の大手企業だけでなく、101人以上の雇用労働者を抱える企業にまで法の適用範囲が拡大されています。 法的な整備と共に男性の意識改革が進むことを期待したいと思います。
 
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