子育て(得)情報

「あおもり子育てネット」の過去記事を再編集して掲載しています。

子育て支援から「子育ち・子育て・個育て支援」に 【全ての子どもと大人には本来「力」がある】《第1回》

  一人一人はかけがえのない存在--- 

 

  そのことをお互いが意識し認め合うことから始まる  

 

  子育ち・子育て・個育て支援 

 

                      《松葉谷 温子》 

 

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   私はこのことをこの10年考え続け活動してきました。
   「一人一人がその個性と能力を十分に発揮して、その人らしく生きることができる
   社会、男女共同参画とは、人権尊重の理念を深く社会に根づかせることであり、
   このような社会の実現は21世紀の最重要課題である。」
 
   たどり着いた、今という「豊かな」時代に一気に吹き出してきた課題は、実は人間
   が本来受け継いできた「力」を発揮しにくくしてきたからではないかと考え、豊かさ
   を追い求めて頑張ってきた日々で、そぎ落とし忘れてきてしまった、人間としての
   力を育むための条件を意識して拾い直して見る必要を痛感しています。
   このことは、今を生き次代を担う子どもたちに対する大人の責任であると強く思って
   います。

 
   人口減少社会をはじめ社会的経済的文化的な変化に、進む方向を見失わずに
   対応していくには、持ち運び自由な、本来持っている「人間力」を開花させ、
   「自分力」として今に活かすこと、そして、その一歩として「自分を知って自信・
   自己肯定感をもち」、人間存在への信頼を取り戻し、他人(ひと)とともに人として
   生きることから始めてはどうでしょう。
 
   その方法として、これまで私たちは、正しい理解と知識は、その人の一回きりの
   人生を納得して、その人らしく生きるための力になると考え、多くの講座や活動を
   通して発信してきました。
   現在もNPOあきたエンパワPLACE・06(通称;えんぷれ)として、
   1)えンプレの家(だれでもが思いを持って立ち寄れ、新たな出会いを可能にする
       コミュニティの場)
   2)えんぷれ相談室(エンパワメントを支援する女性の相談・グループワーク)
   3)チャイルドラインあきた(18歳までの子どもの声によりそう電話)
        の3つを活動の柱として展開し発信しています。
        これまでに感じ、培ってきたことのいくつかについて記します。
 
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       【1】.すべての子どもと大人には本来「力」がある

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   1.「ひと」・人間、システムとしての人間のすばらしさについて
   
    ここ30年の研究で、外界からのストレスに対応して細胞の中にストレスタンパク
   質がつくられ、ストレスから身を守ることが分ってきました。
   
   DVやテロ、災害、戦争体験等過度のストレスにさらされることで無力感、記憶や
   思考の低下、依存症などの症状をもつ心的外傷後ストレス障害がおこるメカニズ
   ムや、身体的のみならず精神面の症状にもストレスが深く関わることが分かります。
 
 
   1)良いストレスとわるいストレス  --ストレスへの耐性を育めるシステム
 
   実際に実験でも軽いストレスを何度かかけるとその都度細胞は強くなる。
   細胞にしても人間にしても、小さなストレスの積み重ねによってストレスへの耐性
   がつくられるのだから、小さなストレス小さな挫折は、良いストレスとして、めげな
   い体力や精神力を培い、人の成長に有効に働くといえます。
   全くストレスのない状態は、かえって、生体としての人間のストレス耐性を弱めて
   しまうでしょう。
   「子どもをダメにするには過保護にすれば簡単です。不合理なことを乗り越える力
   をつけることが子どもには大切だ
」という心理の先生の言葉は、人のストレス反応
   のメカニズムに通じます。
 
   
2)自然治癒力と人間力

   かつて子育て時期をご一緒した外科医の野一色さんは、犬にバイパスの人工血
   管を埋め込む実験と研究を盛んにされていました。
   講義の記事の中で、『医療は自然治癒の人的誘導』と題し、人工臓器と自然治癒
   とは全く両極端に位置するような印象を受けますが、生体は恒常性を維持するため
   如何なる事態が生じようとも自然治癒を黙々と進行させています。
 
   人工的に病気を治療することを考え、研究を続けた結果たどり着いた、「医療は
   自然治癒力にゆだねる」結論は、非常に興味深いものでした。
    
   先日、HIV感染者の方が、およそ16年間薬を飲まずに、エイズを発症せずに、
   悩み苦しみながらも「一人の人格ある人間・自分として生きる」ことを求め続け、
   この間、体のバランスを保って社会生活と活動を続けて来られた話も、心と身体
   からなる人間のシステムとしての力を感じ、「自分らしく生きる」ことの体に対する
   心理的な影響力や、「健康」とは心と体の両面から捉えることを再確認させられま
   した。

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          2.人間発達の可塑性  生涯発達という考え方
 
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           《5才Gと6才Fの虐待されていた2人が発見され、
         その成長の回復支援のプロジェクトに関わった方の話から、
      人間の成長に何が大事か、必要かをあらためて考えさせられました。》
 
 

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   2人は屋根もないトタンで囲まれた小屋に裸のままで放置され、時々上の子どもの
   残りを貰うというわずかな食べ物で命を繋いでいました。
   発見された時は、1才と1才半位の体格で、歩けず、言葉もなく、乳児院に保護され
   ました。栄養を脳に集中し、体の成長は凍結された状態でした。
 
   プロジェクトとして、まず取組んだことは、
   (1)担当保育士との愛着の関係・心理的絆の形成、きょうだい同士の関係、仲間
     との関係、職員とプロジェクトチームとの対人関係づくり
   (2)栄養の改善
   (3)絵本や教育玩具などの文化的刺激の導入でした。 
 
   母親は、Fには1才頃まではミルクを飲ませたが、Gの時は抱いた記憶もなく、
   お風呂にも入れたことがありませんでした。
 
   ケアが進み、身体的に急激な回復を示し、遺伝子のプログラムにあるが発見時
   には見えなかった永久歯の歯牙が6年後には現れました。
   Fは救出後直ぐに担当保育士になつき、人間関係に非常に敏感でした。
   Gは5歳になるまで母親との心理的絆はできておらず、愛情をかけられたことが
   無く、誰かに愛情を覚える体験もなかったので、他人にも無関心でした。
    初めの保育士に代わり、新しい保育士に愛着を感じた時、Gは、はじめて自分と
    違う他人の存在が見えてきました。
   他の子に自分を主張することができるようになり、豊かな人間関係を築けるように
   なり、同時にほとんどしゃべれなかった言葉も目覚しい勢いで身につけ始めました。
   
   保育士や他の子どもとの関わりが言語能力の発達を刺激したようです。
   生後1年かけて育まれる愛着を、その過程をやり直すことによって、Gの心は初め
   て成長でき、知的能力が発達を取り戻しました。
   言葉のなかった小屋に閉じ込められていた時の記憶がないことが幸いして、その
   後の母親との関係をうまくつくることができました。
   
   2人は行き届いたケアと彼ら自身の主体的努力により、陸上や家庭科などに成果
   を見せ、県立高校を出ました。
   Fは3人の子のお母さんとして立派に家庭を築いています。
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    このプロジェクトに関わり、子どもの発達には、身近な人との社会的なやり取りを
    通じて結ばれる心理的絆・愛着が何よりも大事であること、人が如何に
潜在的
    な可能性
をもち、その開花のために何重ものガードに守られていること、また
    親のみならず、きょうだい、仲間、近隣の人、教師、そしてメディアを通しての人々
    との出会いや社会的なやり取りを通して人間化への道を歩むことが分りました。
 
    
人は全生涯を通して様々な機会に、量的には乳幼児期には及ばないが、
    質的には高い可能性を持って発達するのです。
    初期の母子関係のみが人間性を発達させる決定因ではなく、後からやり
    直しや修正はきくということです。

  二人の子どもは、そういう希望を与えてくれたのではないかとの内田伸子教授の
    話でした。
 
     私はこの話に強い感銘を受け、あらためて、人間の可塑性と、その人が持って
    いる力を本人が出していく「エンパワメント」を支援する対人援助者としての役割
    の重要性を深く心に刻みました。
    私自身カウンセリング、グループワーク、そしてチャイルドライン、子育ち・子育て・
    個育て支援等、人に関わる活動を通して、その共通の基盤に「その人には本来
    力がある」「それを十分に受けとめ寄り添うこと」で、その人はその力を自ら発揮
    し、新たな道を見つけていけるという人間観を確認した思いでした。
 
             
 
  
 
 
 
         3.愛着の形成 アタッチメント
 
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    このFとGの回復の過程は、子どもの成長には、自分を大事にしてくれる人との
    安定した愛着の関係がつくられ、その関係のもとに、自分が大事にされてよい
    存在であることを確認することで、はじめて他の人の存在が自分との関係の中
    で明らかになってくる。
    
    このスタートが不安定であったり、なかったりすれば、その後の人間関係が歪
    んだリ、適切な距離を保てなかったり、築いたりすることが難しくなる。
    
    この愛着の関係が新たな多様な関係への広がりを可能にし、豊かな人間関係
    を紡いでいけるのだと思います。
    
    しかし、この愛着の形成は、乳幼児期と限らず、その過程を育ち直すことで、
    かなり人間関係は築きやすくなります。それには受容と共感が不可欠で、この
    愛着経験の有無は、思春期・青年期等での課題の解決に影響してくることが
    あります。
    愛着を形成できず、大人になっても自尊感情がなく、人間関係を難しくしている
    ことは多々見受けられます。その修復や形成がいつでも可能になるバイパス
    機能を、家庭がそぎ落としてきてしまったのが現代社会ともいえます。
 
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    遺伝的・生物学的・心理社会的要因が相互に関連して発達する力と説明されて
    いる概念で、その要素として、アメリカ心理学会では、次の4つをあげ、この力の
    育成が重要になるといわれています。
    1)現実的な計画を立て、それを1歩1歩成し遂げていく力 
    2)自分自身を肯定的に捕らえ、自分の力と能力を信頼することができること
    3)コミュニケーションと問題解決能力 
    4)強い感情や衝動をマネイジメントする能力
    
    これは、1.で触れた本来人間がヒトとして引き継いできたストレス対応の
    メカニズムのシステムや自尊感情・自己肯定感、関係的な自立、愛着の形成に
    ついて研究され考え活用されてきたことに重なっているように思います。
    
    いずれストレスの多い現代社会、先の見えにくい将来に生きる子どもにとっては、
    必要な能力であり、それを育む土台としてのヒトシステムを持つ全ての子どもも
    大人も育みうる能力だと思います。
    ただ、それには現代社会は余りにその人間力を発揮しにくくなっています。
 
    いくつかのポイントを挙げて、より人間としての力を開花しやすくするために、
    大人たちは、冷静に足元の生活の仕方を見直し、手足を十分に使い、五感や、
    相手への感度を磨くに相応しい関係と環境を復活することをはじめましょう。
 
    気づかぬうちに捨て去ったことを再び取捨選択して、活かし直すことを身近な
    ところから取組みましょう。
    あなたができることが必ずあるはずです。何故なら、かつて見たり聞いたりしたり
    した経験のかすかな記憶が、子どもであったときの気持ち・感情とともに残って
    いるでしょうから。
    記憶が薄れているなら、まだそれを話せる伝えられる人が身近などこかにいる
    はずです。声をかけ、その人の話をまず聴いてみましょう。

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